正月二日、文章の書き初めってことでちょっと長めに。
このブログには二十四節気(にじゅうしせっき)と七十二候(しちじゅうにこう)を右下に入れるようにしている。昨日の元日はたまたま七十二候の雪下出麦と言う日だったので、昨日のエントリを見てもらえればよくわかるだろう。
二十四節気と七十二候、どちらも昔に使われた季節を表すための表現だが、現代でも二十四節気は良く使われている。例えば1月6日は小寒だ。
多分NHKの朝の天気予報などでは、「今日は二十四節気の一つ小寒です。この日は寒の入りとも言って、一年で一番寒い時期の始まりとされています。」なんてアナウンスが流されることだろう。
なぜ現在でもこの二十四節気がよく使われるのかと言うと、旧暦(太陰暦・太陽太陰暦)の時代に季節を表すために使われた伝統ある言葉なのに、二十四節気は太陽暦基準で造られていたから、今でも季節を表すのにぴったりだからである。そして二十四節気をさらに初候・次候・末候と三分割したのが七十二候だから、これまた季節感の狂いが出にくい。
よく現在の暦は季節感がないなどと言うが、これは誤解で明治5年と6年の間に新暦への切り替えが行われた際、単純に日付のみを移設して季節を示す言葉をそのままにしたから季節感とのずれが生じただけなのだ。
まぁ、やむをえない部分もあって、たとえば今まさに正月三が日なわけだが、正月のことを新春って呼ぶよな。でも、少なくとも関西以北においては、どうひっくり返ったって一月が春と言うイメージはない。多分、中国・四国・九州でも似たようなもんだろう。
これは旧暦で正月・二月・三月を春として分類したものを、そのまま新暦にあてはめたために、35日ぐらいの季節のずれが生じてしまったためである。だから本来なら昔の暦通り二十四節気の一つ立春(2月4日ごろ)から、夏の節分(立夏の前日、5月4日ごろ)までを春と呼ぶ方が適切なのだ。
でもそうなっちゃうと正月に初春のお慶びを申しあげにくくなるわけで、何となくずれたままやってきてしまっている。
なぜこうしたずれが出たのかと言うと、新年の設定方法に違いがあったからだ。
現在の暦であるグレゴリオ暦は平年の春分の日を3月21日として基準に取り、そこから逆算して1月1日を新年の最初の日として計算している。
一方、現在の日本の暦の前に使われていた太陽太陰暦では、二十四節気の一つ、雨水(旧暦正月15日ごろ・新暦2月19日ごろ)を正月の中日として、雨水が含まれる月を正月と決めたので、その約15日前の立春がだいたい新年の始まりになったのだ。このためおよそ35日ほどの季節感のずれが新暦と旧暦の間に生まれたわけである。
また、旧暦である太陽太陰暦は月の運行を基準にした暦なので、一ヶ月がおよそ29.5日になる。このため1年が354日と地球の公転周期より11日弱短くなるのでおよそ2.7年に1ヶ月分くらい日数が不足する。そこで不足日数が一ケ月に達した時、閏月(うるうづき)と言う奴をぶち込んだ。
そうやって、その年は13ヶ月あることにして入れ合わせをつけたわけだが、こうなってくると農業などで気候に影響されやすい仕事には大変不都合が起きる。
そこで開発されたのが二十四節気なのだ。これは完全に太陽の位置で計算するシステムで、太陽の位置が黄経0度になる春分を基準に15度ずつ割り振ったものだ。ここに天体としての月が入り込む余地はなく、完全に太陽暦基準だな。だからこれに従って農作業などを行うと季節とのずれが最小限に抑えられるメリットがあったというわけだ。
江戸時代に太陽の位置を度数で決定できたのかという疑問がありそうだが、実は最後の旧暦である天保歴では太陽の視黄経を測定して二十四節気を決定していたと言うから日本の昔の科学技術には驚かされる。それ以前は単純に約365日を24等分していたらしいが。
で、太陽太陰暦の暦法では、二十四節気のうち月の半ばに来る中日、たとえば二月は春分、三月は穀雨と言うことになるのだが、これを基準に月を決定するシステムを取っていた。ところが先に言ったような理由で月の運行を基準に日付を決めてゆくとだんだんずれてきて、中日が本来あるべき月に属さなくなる時が来る。そのタイミングで閏月をぶち込んだというわけだ。
たとえば本来旧暦5月16日にあるべき夏至がだんだんずれて行って5月末日の翌日に来てしまうことになったら、翌月は6月ではなく閏5月と言うことにしたわけだ。そうすることで夏至は5月の中日として位置をキープできる。でもって、その年は13ヶ月あるってことになったわけだな。
・・・で、実はここまでが長すぎる前置き。(笑)
気付いていた人もおいでだろうが、七十二候の読み方が、このブログでは一般的なものと異なっていることがある。本来はきちんとした読み方があったはずなのだが、中国から来たものをそのまま日本の暦にあてはめて、読み方も音読み中心で日本語にした二十四節気に対して、七十二候は日本の風土に合わせて変更が加えられた本朝七十二候と呼ばれているものなのだ。
さらにそれが略本暦に記載されていた時代とは異なり、それを引き継いだ現代の神宮小暦には七十二候の記載がない。だから正確な読み方がわからないのだ、
一般にネットで見かける読み方はソースが一つなのか、どうもしっくりこない読み方が一般化している。たとえば春の七十二候に桜始開と言うのがあるのでこれを見てみよう。
見ての通り桜が開き始めると言うことなのだが、一般化した読み方では「さくら、はじめてひらく」とされている。なんか違和感がないか?
七十二候は先に言った通り中国から来たものだ。現在の中国語で桜が開き始めると言う意味の言葉は「樱始开」となる。日本の七十二候の通りだよな。一方で「桜はじめて開く」と言う意味の中国語は「樱首次开」だ。
まぁ、それ以前に日本語でも普通は「初めて開く」であり「開き始める」だよな。
一般化しているとは言え根拠がはっきりせず、日本語でも中国語でも文法的におかしい読みを使うのは気がひけたので俺が勝手に読み方を変えて紹介していた。でも、単に訓読みを変えるのもなんなので音読みも入れてみたりして言い訳していたわけだが、
でも、一般化した読み方の根拠もわからないし、かと言って俺の読み方は完全に自己流なのでやっぱりどうかとも思う。ってことで、今後は七十二候については読み方を示さず漢字のみでの表記にすることにした。難読漢字にはその文字だけに振り仮名を振るつもりだ。場合によっては具体的な意味を示すようにするかもしれないが、この解釈にも微妙に困る部分があるから当面は漢字の紹介だけにとどめよう。
二十四節気は完全に読み方も定着しているから安心して紹介できる。ついでに暦便覧での解説も付けてあるが、これも根拠があるから安心して紹介できるのだ。
このブログには二十四節気(にじゅうしせっき)と七十二候(しちじゅうにこう)を右下に入れるようにしている。昨日の元日はたまたま七十二候の雪下出麦と言う日だったので、昨日のエントリを見てもらえればよくわかるだろう。
二十四節気と七十二候、どちらも昔に使われた季節を表すための表現だが、現代でも二十四節気は良く使われている。例えば1月6日は小寒だ。
多分NHKの朝の天気予報などでは、「今日は二十四節気の一つ小寒です。この日は寒の入りとも言って、一年で一番寒い時期の始まりとされています。」なんてアナウンスが流されることだろう。
なぜ現在でもこの二十四節気がよく使われるのかと言うと、旧暦(太陰暦・太陽太陰暦)の時代に季節を表すために使われた伝統ある言葉なのに、二十四節気は太陽暦基準で造られていたから、今でも季節を表すのにぴったりだからである。そして二十四節気をさらに初候・次候・末候と三分割したのが七十二候だから、これまた季節感の狂いが出にくい。
よく現在の暦は季節感がないなどと言うが、これは誤解で明治5年と6年の間に新暦への切り替えが行われた際、単純に日付のみを移設して季節を示す言葉をそのままにしたから季節感とのずれが生じただけなのだ。
まぁ、やむをえない部分もあって、たとえば今まさに正月三が日なわけだが、正月のことを新春って呼ぶよな。でも、少なくとも関西以北においては、どうひっくり返ったって一月が春と言うイメージはない。多分、中国・四国・九州でも似たようなもんだろう。
これは旧暦で正月・二月・三月を春として分類したものを、そのまま新暦にあてはめたために、35日ぐらいの季節のずれが生じてしまったためである。だから本来なら昔の暦通り二十四節気の一つ立春(2月4日ごろ)から、夏の節分(立夏の前日、5月4日ごろ)までを春と呼ぶ方が適切なのだ。
でもそうなっちゃうと正月に初春のお慶びを申しあげにくくなるわけで、何となくずれたままやってきてしまっている。
なぜこうしたずれが出たのかと言うと、新年の設定方法に違いがあったからだ。
現在の暦であるグレゴリオ暦は平年の春分の日を3月21日として基準に取り、そこから逆算して1月1日を新年の最初の日として計算している。
一方、現在の日本の暦の前に使われていた太陽太陰暦では、二十四節気の一つ、雨水(旧暦正月15日ごろ・新暦2月19日ごろ)を正月の中日として、雨水が含まれる月を正月と決めたので、その約15日前の立春がだいたい新年の始まりになったのだ。このためおよそ35日ほどの季節感のずれが新暦と旧暦の間に生まれたわけである。
また、旧暦である太陽太陰暦は月の運行を基準にした暦なので、一ヶ月がおよそ29.5日になる。このため1年が354日と地球の公転周期より11日弱短くなるのでおよそ2.7年に1ヶ月分くらい日数が不足する。そこで不足日数が一ケ月に達した時、閏月(うるうづき)と言う奴をぶち込んだ。
そうやって、その年は13ヶ月あることにして入れ合わせをつけたわけだが、こうなってくると農業などで気候に影響されやすい仕事には大変不都合が起きる。
そこで開発されたのが二十四節気なのだ。これは完全に太陽の位置で計算するシステムで、太陽の位置が黄経0度になる春分を基準に15度ずつ割り振ったものだ。ここに天体としての月が入り込む余地はなく、完全に太陽暦基準だな。だからこれに従って農作業などを行うと季節とのずれが最小限に抑えられるメリットがあったというわけだ。
江戸時代に太陽の位置を度数で決定できたのかという疑問がありそうだが、実は最後の旧暦である天保歴では太陽の視黄経を測定して二十四節気を決定していたと言うから日本の昔の科学技術には驚かされる。それ以前は単純に約365日を24等分していたらしいが。
で、太陽太陰暦の暦法では、二十四節気のうち月の半ばに来る中日、たとえば二月は春分、三月は穀雨と言うことになるのだが、これを基準に月を決定するシステムを取っていた。ところが先に言ったような理由で月の運行を基準に日付を決めてゆくとだんだんずれてきて、中日が本来あるべき月に属さなくなる時が来る。そのタイミングで閏月をぶち込んだというわけだ。
たとえば本来旧暦5月16日にあるべき夏至がだんだんずれて行って5月末日の翌日に来てしまうことになったら、翌月は6月ではなく閏5月と言うことにしたわけだ。そうすることで夏至は5月の中日として位置をキープできる。でもって、その年は13ヶ月あるってことになったわけだな。
・・・で、実はここまでが長すぎる前置き。(笑)
気付いていた人もおいでだろうが、七十二候の読み方が、このブログでは一般的なものと異なっていることがある。本来はきちんとした読み方があったはずなのだが、中国から来たものをそのまま日本の暦にあてはめて、読み方も音読み中心で日本語にした二十四節気に対して、七十二候は日本の風土に合わせて変更が加えられた本朝七十二候と呼ばれているものなのだ。
さらにそれが略本暦に記載されていた時代とは異なり、それを引き継いだ現代の神宮小暦には七十二候の記載がない。だから正確な読み方がわからないのだ、
一般にネットで見かける読み方はソースが一つなのか、どうもしっくりこない読み方が一般化している。たとえば春の七十二候に桜始開と言うのがあるのでこれを見てみよう。
見ての通り桜が開き始めると言うことなのだが、一般化した読み方では「さくら、はじめてひらく」とされている。なんか違和感がないか?
七十二候は先に言った通り中国から来たものだ。現在の中国語で桜が開き始めると言う意味の言葉は「樱始开」となる。日本の七十二候の通りだよな。一方で「桜はじめて開く」と言う意味の中国語は「樱首次开」だ。
まぁ、それ以前に日本語でも普通は「初めて開く」であり「開き始める」だよな。
一般化しているとは言え根拠がはっきりせず、日本語でも中国語でも文法的におかしい読みを使うのは気がひけたので俺が勝手に読み方を変えて紹介していた。でも、単に訓読みを変えるのもなんなので音読みも入れてみたりして言い訳していたわけだが、
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- 2015.01.02 Friday
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