コレステロールにまつわる怪しい動き 評価編

さて、昨日の続きだ。昨日見てもらった動画について評価をしてみよう。みんなの意見と比べてどうだっただろうか。

まずは総合的な考え方なのだが、結論ありきで始まってそれに沿った論理展開を行っているため、放送局にとって都合の悪い部分は伏せている。どのテレビ番組にも言える事だが、それが原因で間違った印象や情報がそこここに見てとれるのが残念だ。

だから正しい情報もあれば誤った情報もある。また悪意で誘導しているわけではないだろうが単純化の手法を間違っているため、結果としてウソを言っている事になっている部分も少なくない。

では個々に見て行こう。
 

まずは明らかに間違いである部分。理由は後ほど。
 

  • トランス型脂肪酸は人工物である。
  • 自然に存在するかしないかが健康に資するかどうかの判断基準になる。


次に、誤った情報を含んでいるために関連する正しい情報までもが間違いになっている内容。理由は後で示す。


  • ω3脂肪酸が好ましく、ω6脂肪酸は良くない。


心情的には理解できるが正しくないと思われる内容とその理由。


  • 高コレステロール値の人の中には長寿の人もいるのでコレステロール値と寿命は無関係だ。
 (車にはねられた人の中にも、戦争で銃弾を受けた人の中にも長寿の人はいる。
  だから事故や戦争と寿命は無関係だという論理と同じだ。)

 

次に、正しいという確証はないが、心情的に同意できる内容。


  • アトキンス博士(ローカーボダイエットの提唱者)は正しかった。
  • 糖質の摂取量が人間の処理できる限界を超えている。
  • トランス型脂肪酸は毒である。
  • 異性化糖は身体によくないと思われる。
  • テレビコマーシャルなどに踊らされてはならない。

 (とは言え、テレビがそれを言っちゃうのは自己否定にならないか?(笑))


そして、正しいと思われる情報、あるいは俺が持っている情報と一致している情報だ。

  • コレステロールは身体の修復などに必要なものである。
  • ω6脂肪酸とトランス型脂肪酸が炎症に係わっている。
  • マーガリンよりもバターが好ましい。
  • 糖質・精製炭水化物の過剰摂取が問題である。
  • 悪玉コレステロール(LDL-c)には大粒子(実は善玉)と小粒子、酸化型(悪玉)がある。


また、正しいか誤っているかが定かでない、あるいは情報の内容が不完全で疑問である情報。
 
  • 心疾患の原因は炎症による物としても脳血管障害の原因はどうなのか。
  • 低脂肪・高糖質の食事だけがアメリカ人の肥満の原因なのか。
  • ココナツオイルに関する治療効果。
  • 異性化糖の健康に対する悪影響の説明が肥満以外にない。


そして最も重要な部分、導入部の「高コレステロールは健康に良い」と言うことについて何の根拠も明示されていないこと。

つかみさえよければいいと言うことなんだと結論付けざるを得ない。


だいたいこんなところかな。

上で否定的に示した部分について理由を説明しておこう。まずは脂質についての解説はスピンオフサイトの方に詳しいのでそっちを見てくれ。以下の四つのリンクで別窓に開く。

健康に良い油の摂り方1|俺と糖尿病の15年戦争第18回
健康に良い油の摂り方2|俺と糖尿病の15年戦争第19回
健康に良い油の摂り方3|俺と糖尿病の15年戦争第20回
マーガリンなどのトランス型脂肪酸|俺と糖尿病の15年戦争第21回

トランス型脂肪酸の害は存在するだろうが、トランス型脂肪酸は人工物ばかりでなく自然にも存在する。特に反芻動物の脂肪(牛肉や羊肉、牛乳やバター)などには1%〜5%程度の天然のトランス型脂肪酸が含まれていて、それは無害だと言うことになっている。

そしてこれが一番問題なのだが、実はまだトランス型脂肪酸の健康に対するはっきりした害が確定されていないことである。もちろん無害と言うわけではなく、健康への悪影響が懸念される研究から、強く示唆されるものまで、結構広範囲にわたってさまざまな害が疑われている。しかし、まだどれも定性的・定量的に確定していないので、取り敢えずの安全策としてWHOは全摂取エネルギーの1%以内にするのが好ましいと言う勧告を行っていると言うわけだ。

それならばやっぱり健康に悪いんだから規制したほうがいいとか、なんでもトランス型脂肪酸に原因を求めることは非常に危険である。このことはたとえて言うなら

「風邪は万病の元で、健康や生命に害を及ぼす。だから車にはねられて死ぬのも実は風邪が原因なのであって、自動車の安全性などは気にしないで無免許でもどんどん乗れば良い。」

と言うキャンペーンをデトロイトがロビー活動でやってるのと同じレベルなのだ。だから、もし危険性があるのであっても、その危険性の及ぶ範囲や内容をしっかり確定し、みんながそれを意識するようになることが不可欠と言えよう。

さらにもうひとつ、われわれがそのような危険な物質について気になるのは生物濃縮と身体への蓄積だ。しかし、脂肪酸の代謝においてトランス型とシス型の間に差異はない。つまり体に蓄積されたり、食物連鎖を通じて濃縮されることはないので、そうしたトンデモ理論に出くわしても惑わされないようにしてほしい。


次に、天然のものは安全で人工のものは危険と言う切り分け方だ。実はこれが一番危険な判断基準である。ふぐ毒も、地上最強の毒素ボツリヌストキシンも人工物ではなく天然の製品(笑)だ。


そして、脂肪酸のバランスの問題だな。アメリカや日本に於いても摂取量のアンバランスは問題だが、ω3もω6も必須脂肪酸なのだ。

ω6の不飽和脂肪酸のほとんどを占めるリノール酸だが、これが不足するとアレルギーによる皮膚のトラブルや血中コレステロール値の上昇を招くのであるが、実は日本でもアメリカでも、過剰摂取が問題になるほど大量に摂取されている。と言うのも高オレイン酸タイプに品種改良されたひまわりや紅花油、オリーブオイル、椿油などを除くと、ほとんどの植物性油脂に含まれる中心的脂肪酸がリノール酸だからである。

一方、過剰摂取の害についてこのテレビの内容は正しい。リノール酸は人間の体内の生合成過程を経てアラキドン酸と言う脂肪酸に変化し、そこからさまざまな物質に代謝されてゆく。その代謝生成物の中にプロスタグランジンE2と言う炎症や発熱に寄与する物質があるため、過剰に摂取すると問題があると言うわけだ。

ココナッツオイルに言及した部分もあったが、ココナッツオイルは非常に飽和脂肪酸の量が多く、比率で言えばラードやヘットの2倍近い飽和脂肪酸の量(85%前後)を持っている。で、動物性脂肪について擁護するようなイメージではあったが、明らかにココナッツオイルは健康によいと言うアピールもあったので、実は動物性脂肪は隠れ蓑ではないかと思うのだ。

ココナッツオイルと同じような脂肪酸組成を持つものにパームカーネルオイルがある。ココナッツオイルはココ椰子の胚乳から絞るが、パームカーネルオイルはアブラ椰子の胚乳から搾油する。いわゆるパーム油はアブラ椰子の果肉から絞ったものだ。

で、このアブラ椰子(パームツリー)のプランテーションが自然破壊を招いていると言う批判があって、世界中からアメリカのパーム業界を非難する声が上がったことがある。しかし。どのように押さえ込んだのか、最近では日本まではその批判は聞こえてこない。

うがった見方かもしれないが、アメリカ国内においてココナッツオイルやパームカーネルオイルの人気が高まると、国内での批判が起こりにくくなるから世論誘導を行っているのかもしれないなどと思ったりもする。


なお、飽和脂肪酸は危険なものだから摂取してはいけないなんてことはない。一部の狂信的植物性信者がそのようなことを言ってる場合もあるが、基本的に飽和脂肪酸も人間にとって必要な栄養素なのだ。ただ、バランス的に飽和脂肪酸が多すぎると良くないと言うだけである。

大まかに言って、


4321
一価不飽和脂肪酸飽和脂肪酸ω6多価不飽和脂肪酸ω3多価不飽和脂肪酸
オレイン酸
パルミトレイン酸
など
 パルミチン酸
ステアリン酸
など
 リノール酸
γリノレン酸
など
 αリノレン酸
DHA、EPA
など


くらいの比率で摂取することが望ましいとされている。どれかの脂肪酸を取ってはいけないなどと言う話はどこにもない。


しかし、肉食中心の生活を送っていると飽和脂肪酸の比率が4割から5割と高くなってしまうし、植物性の油を意識して取っていた場合、ω3:ω6:一価の比率を意識していないとω6が全体の4割から5割と多くなってしまう。相対的に一価不飽和脂肪酸やω3多価不飽和脂肪酸の摂取量が不足して栄養バランスが崩れるから注意しましょうねと言うだけの話だ。


さて、アメリカ在住の气さんから昨日のエントリへコメントを頂いているので、ぜひそれも併せて読んでくれ。俺の回りくどい文章と違って、アメリカ人の実態を簡潔に教えてくださっている。


補足的にコレステロールに関しても述べておこう。高比重リポタンパク(HDL)-コレステロールは俗に善玉、低比重リポタンパク(LDL)-コレステロールは俗に悪玉と呼ばれているが、こいつも誤解のもとのような気がしている。


HDLとLDLは大雑把に分けると仕事の担当が違うだけと言うことになる。コレステロール自体は水にとけないので、リポタンパクにくっついて運ばれる必要がある。で、肝臓から血管内の修復が必要なところへコレステロールを運ぶのがLDL、不要になったところから肝臓にコレステロールを持って帰るのがHDLなのだ。


だから血管内に置かれるコレステロールを運ぶLDLが悪玉で、回収するHDLが善玉と言うことになるのかな。まぁ、工事現場の残土を運び去るダンプがHDLで、造成用の土を持ってくるダンプがLDLってことだ。


だからこのバランスが崩れてLDLが多いとちょっとの炎症で大量のコレステロールが血管内に積み上げられ、HDLが少ないと修復が終わったところから回収が追い付かずに大漁の残土が残った工事現場のようなことになると言うわけだ。逆にLDLが少ないと修復に必要な材料が足りなくなるので血管の修復ができないことになる。


だから血液検査の基準値にはLDL、HDLともに最高値と最低値が設定されているのだ。



最後に日本での反応だが、この動画を紹介していた糖質制限ブログでは、糖質制限を肯定的に捉えたテレビ番組だということで紹介されていたものの、あまり批判的な意見は見られなかった。ひとつの真実で10の嘘を覆い隠す手法にいい加減日本人も気づくべきだと思うんだがな。








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